2020年5月18日月曜日

SRX アシストスリッパークラッチ調整

エンジンのナラシ完了と同時に,実験的に入れてみたアシストスリッパークラッチ。
クラッチレバーの操作が軽くなったメリットは十分にあるけれど,やっぱりもうちょっとスリッパー側も効いてほしいと思った。
まずはアシストスリッパークラッチの構造おさらい。
画像はホンダの技術説明より借用。
構造自体はとても単純。最近になって量産できるようになったのは,成形技術の進歩で回転方向にオーバーハングしたアシストカムが金型だけで作れるようになったからなんだと思う。

加速時(エンジンから回す時)はカムが食い込みプレッシャープレートを押し付け,減速時(後輪から回す時)はカムが乗り上げプレッシャープレートを持ち上げる。
加速時にプレッシャープレートが押し付けられるため,クラッチ板を押さえつけるスプリング荷重を減らしてもクラッチが滑らず,操作が軽くなる。

スリッパー側はアシストカムの斜面を乗り上げていく際の垂直方向成分の力が,クラッチスプリングのプリロード荷重を上回った分,プレッシャープレートが持ち上げられて半クラッチになる。
ということはクラッチスプリングのプリロードを調整すれば,スリッパーの動作度合いを変えられるのでは?

ということで早速クラッチカバーを開ける準備。
エンジンオイルが出る量を極力減らすため,タンクを外してハンドルの下に台を置いて,左に車体ごと倒す。

カバーを開けるとこんな感じ。
クラッチスプリングを締め付けるボルトの下に,スプリング内径より小さいワッシャーを挟んで,1mm程プリロードを減らす。
クラッチスプリングの寸法からスプリングレートを計算すると,約14.5N/mm。
このスプリングを18.8mm潰した状態でセットされているので,プリロード荷重は272.6N。
この荷重が大きいのか小さいのかは判断が出来ないけれど,とりあえず1mmプリロードを減らすと265.3Nとなり,3%程度減る計算。

この状態で乗ってみると,確かに以前よりは多少スリッパークラッチの介入が増えている。
(スリッパーが効いている時はレバーに軽くキックバックが来る)
もうちょっとスリッパー介入が速くてもいいかもしれない。
ただ介入が増えたことで,アシストスリッパークラッチもメリットばかりでは無さそうというのも見えてきた。

アシスト機構の構造上,加速時には必ず「アシストカムが食い込む」という動作が入る。
これが減速→加速の切り替えの時のラグになるので,減速から加速に切り替わる時に慣れるまではほんのちょっとの違和感が付きまとう。

機構上どうしても「ガタ」が必要なためだと思うけれど,走行中に結構カチャカチャ音がする。
ヤマハのアシストスリッパークラッチには,プレッシャープレートにラバー部品が入っていて,これが恐らく音や切り替えショックを減らすダンパーだと思う。
それでも加減速切り替え時や,路面の凹凸で駆動力が抜けたり着地したりした際にカチャカチャとうるさい。
また,ガタの分だけ回転バランスが悪いのか,エンジンの振動は少し増えた。
多気筒エンジンならトルクが安定している分もうちょっとマシかもしれないけれど,大型単気筒だとエンジントルクの変動が大きいことも原因かもしれない。

上でも書いたけれど,スリッパー操作時にレバーにキックバックが来るのが慣れるまで違和感がある。
スリッパー動作時は,プレッシャープレートが持ち上げる→バックトルクが減る→カムを持ち上げる力が減る→プレートが下がる→バックトルクが増える→カムが持ち上げ,プレートが浮く…,という具合で,どうも断続的にスリップを繰り返しているのだと思う。
プレートが持ち上がっている時にはワイヤー遊びが増え,持ち上がっていない時には減る。
それが結果的にクラッチレバーへのキックバックという形になって出てくるのだと思う。
普通クラッチレバーにキックバックが来ることなんてないので,正直慣れるまでは結構気持ち悪い。

デメリットも色々あるものの,クラッチレバーの操作荷重がとにかく軽いメリットが大きいので,もうちょっとセッティングしてみようと思う。

2 件のコメント:

  1. 初めまして、SRXにスリッパークラッチを入れてる人初めてみました。しかも数台を組み合わせて装着とは凄いですね。
    私もSRに純正ベースでアシスト&スリッパークラッチが装着出来ないか模索中です。また参考にさせてください!

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    1. 単純に組み合わせないで入れられるものが無かったので…。
      クラッチのバスケットは本来非分解の部品ですし,一撃でエンジンもミッションも壊れる可能性もあるので,ポン付けできるものが無いなら諦めるのが正しいと思います。
      いずれにせよお気をつけて。

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