2018年7月8日日曜日

すごく大ざっぱな単気筒クランクバランスの考え方

鍛造ピストンが寸法的に取付できることは分かったものの,重量が軽くなった分どの程度クランクバランスが狂うのかが分からない。
というかそもそもノーマルの設定はいくつなのよ?ということで,クランクのバランス率を測ってみた。

そもそも直4のエンジンなら,ジャーナルにかかる負荷の軽減目的でカウンターウエイトはつけるものの,基本的には対向するピストン同士で振動がキャンセルされるので,クランクシャフト単体は回転バランスがとれていればOK。


これが単気筒になると打ち消すピストンがいないので,クランクの回転バランスがゼロだとこうなる。

F=m・aの運動方程式から,加速度(=運動速度の変化)が発生した時に力が発生する。
なのでピストンの速度がゼロになる上下死点で力が発生し,ストロークの中間はほぼ等速運動と考えると力が発生しないとする。(厳密にはコンロッドのせいで違うけれど)
この場合はシリンダー方向にピストン等の往復部重量とストロークに応じた振動が100%出る。
往復部重量に対してクランクシャフト側でのバランス率が0%なので,この状態がバランス率0%のクランクということになる。

このバランス率を100%にするとこうなる。

クランクの発生する力がオレンジ,ピストンの発生する力が青。
上下死点ではクランクとピストンの力が釣り合うので,振動がキャンセルされる。
クランクが90度回った位置では,クランクのアンバランスは遠心力として出るので100%のまま。ピストンの力は上と一緒で発生しない。
なので,バランス率100%のクランクではシリンダーに直交する方向に往復部重量の100%の力(振動)が発生する。

これを70%にすれば「シリンダー方向に30%,直交方向に70%」の楕円になる。
ついでにピストンに対してクランクのバランスする角度を振ると,「シリンダーから30度の方向に100%振動が出る」なんてクランクも作れる。

こんな塩梅で単気筒の場合はクランクのバランス率で振動の出る方向や配分は調整できる。
逆に言うなら,バランサーを付けない限り,方向や配分は変えられても,トータルの振動自体は減らすことはできない。

単気筒でピストン重量を大幅に変えてクランクがそのまま,という場合を考える。
上の100%バランスのクランクで考えると,仮に往復部が80%の重量になった場合には,
 ・上下死点ではクランクの100%に対し往復部80%になるため,20%残る。
 ・90度位置ではクランクの100%が残る。
となるので,「シリンダー方向に20%,直交方向に100%」となり,むしろ振動が増える。
この場合,上下方向の20%は本来想定されていない方向の振動入力となる。
この結果,酷い時にはマフラーやエンジンマウントの破損につながる。

単気筒のクランクバランスは「ピストンやコンロッドを動かさないと測れない」とか「不釣り合いの大きさが大きすぎる」ってことで,一般的なダイナミックバランスを取る機械ではまず測れない。

なのでこんな測り方をした。

1.ホイールバランサーにクランクを乗せて,コンロッド小端におもりを積む。
2.ホイールバランスと同じ要領でつり合いがとれるまでおもりを増やす。
3.バランスが取れた時のおもりの重量に,コンロッドの小端側の重量を足す。
4.「3の重さ/往復部重量×100」で出た値がクランクのバランス率になる。

計測した結果,SRXのクランクは大体48.8~49.5%のバランス率となった。
本来の設計値は1軸バランサーの基本である50%バランスと思う。
入れようとしているピストンが50g軽くなるので,クランクをそのまま使うと大体53%バランスのクランクになる。

長くなったので3%でどれ位変わるかとか,バランサーの考え方は次回。

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