2017年3月15日水曜日

バイクと空力とデザインと

最近各所でにわかに話題のこれ。

DUCATIのビックリドッキリメカ発進的なこれ。
数年前に訳の分からない空力お化けとして世界中をアッと言わせ,瞬く間にMotoGP界のトレンドになったDUCATIの最新作。
まぁ禁止になったからって素直に綺麗なカウルに戻すとは思ってなかったけれど,まさかこうまでやってくるとは…。
もうなんかいっそDUCATIによる世界を相手にした壮大な釣りなんじゃないかと言う気もするけれど,素直に釣られてバイクの空力に付いて考えてみた。

そもそもDUCATIのインパクトが強すぎて隠れがちだけれど,今年のテストに出てきた新形状カウルはどこのメーカーも結構大概な形だと思う。

シュッとしてカッコよかったヤマハは下膨れの関取体形に。


嫌みの無いスッキリした形だったスズキは頬袋に餌詰め込んだハムスターに。


ホンダに至ってはなんかもう「とりあえず去年のカウル使って昨日の夜作ってみました」と言わんばかりの投げやりさを感じる。


最近はカワサキがサーキット専用車ではあるけれどこんなの売ってみたり。


なんかどれもこれもお世辞にもカッコいいって思えないのは私だけか。
正直どれが勝っても「速い車は美しい」どころか醜い気がするのは自分の感覚がもう古いせいなのか。

という精神論はともかく真面目に考えてみる。
DUCATIのコレ。

明確にスクリーン両側がウイング形状になっていて,ダウンフォースはたっぷり発生しそうな形状。
どうにもマレリの共通ECUがトラコンとかウイリーコントロールがイマイチらしく,電制利かせすぎると加速しないから空力で,っていうのがここ数年の流れらしいので,現在のレギュレーションでその目的に対してはこの上なく最適解な気がする。
このカウルのおかげかどうか,ドビィヂオーゾがカタールテストでは総合2位タイムを記録した。

一方でここまで行くとある程度見た目でわかるデメリットもありそう。
まず「これアッパーカウルの防風性がほとんどないんじゃない?」ということ。
普通バイクのアッパーカウルって頭~肩~腕辺りの防風を担う。

でも今年のDUCATIのカウル形状だと普通のカウルで左右に振り分けたり上下に逃がしている部分に大穴が開いているわけだから,腕~肩辺りの風当たりは強そう。
トンネルを抜けた風はウイング形状で多少上方向に向かって行くのだろうけれど,あまり極端に向きを変えすぎてウイングが失速状態になったら元も子も無いはずだから,やっぱり限度はあると思う。

次に去年までの外付けウイングでも散々言われていた「運動性の低下」。
具体的には切り返しの重さとかに出るのだけれど,これはダウンフォースの有る無しとは別問題で,左右方向に動く時に邪魔者があるかどうかの問題。
邪魔者になるのは主に赤丸で囲ったカウル横を流れていく流速の速い流れ。

車体をバンクさせる時や切り返し時はこの流れを押しのけないといけない。
たかが空気だけれど速度が上がればかなり抵抗になるし,サイドカウル面積が大きいほど倒しこみや切り返しでは押しのけないといけない面積も増えるので車体が重く感じるようになる。
最近のスポーツ車のカウルが小さくなっているのもそのせい。
世の中の乗り物で進行方向の流れに対して横方向(バンク方向)の動きが必要なのは飛行機とバイクだけなのだけれど,普通飛行機の断面が丸いのもこの動きのせい。
ウイングが付くと当然ウイングは風そのものの強い流れを利用しているんだから抵抗になる。
多分このカウルのトンネルも,トンネル内に極端に強い流れができるから抵抗になりそう。

この辺を勘定すると,「1周のタイムは速いけれどレースでは疲れる可能性」が高くなってくる。
そういえば去年イアンノーネもしきりに「疲れる」って言ってたから,基本的にはそこが今年もDUCATIの弱みになるかもしれない。

レース以外の空力についても最近にわかに話題になっている気がする。

例えば某バイク雑誌のこんな企画。

これに関してはちゃんと効く所にやれば効果は街乗りでもわかる。
分かるんだけれど,それって乗り比べれば「あぁ,空力だったんだ」って分かる程度の変化で,これやらないと乗れない車両って基本的に売ってない。
テープ貼る前の状態でなんとなく違和感があっても,そういう車両なんだと思えばそれでオシマイな程度。
そりゃ理想は対策してバッチリな状態のが良いのは分かっても,ガムテープ貼りっぱなしじゃカッコ悪すぎる。200万近い金払ってこんなボロい格好で誰が乗りたいと思うのか。
空力対策品カウルなんてどこも売ってないし,企画を一片通り読んで思ったのはバイクのキャラクターラインのエッジとか凹凸を徹底的に埋める方向だから,多分カウル作ってものっぺりしてカッコ悪くなる気がする。
やっぱりバイクって見た目も大事だと思うので,自分は正直やりたくない。
NUDAなんかあの折り鶴みたいなフロントフェンダー外した方がハンドリング遥かに良くなるのだけれど,あれがカッコいいんだから多少ハンドリングが悪くても仕方ないと割り切ってる。

例えばT社が発表したこれ。

アルミテープを貼ると静電気が帯電しなくなって空力が良くなるとかなんとか。
帯電除去っていうならアース線でも取ればいい気がしないでもないけれど,絶縁体(空気)と絶縁体(樹脂)間に導体(アルミテープ)を貼っても空気中に放電なんてしない気が…。
それが成り立つなら冬場コンビニで小銭の受け渡しでバチッって来ないはず。
多分空気(絶縁体)が摩擦する速度が速い部分を樹脂(絶縁体)からアルミテープ(導体)に置き換えるとそもそも静電気が発生しないってことなんじゃないかなぁ…という気がせんでもない。
でもこれも正直カッコ悪いよね。

これの発展形でステアリングコラムだの内装に貼っても接地感が!に関してはもう訳が分からん。
そもそも普通の人って普段から接地感とか気にして運転してるの?気にして感度が上がったからそう感じただけじゃねーの?って言うのは野暮なツッコミか。
どこぞの部品屋さんがナットと花びらワッシャー溶接したボルトで静電気除去して不思議な効果が続々と出るって製品もあるけれど,それこそアース取ればいいんじゃないかと。
まぁ塵も積もればって考え方もあるので一概に否定するつもりも無いけれど,塵を積む前にやることって色々ある気がというのが個人的な意見。

とりあえず今のところ空力とカッコよさは両立出来ないんじゃないかなぁというのが今の個人的な感想。
だってスポーツカーって今の空力と運動性追求したミッドシップ車よりロングノーズショートデッキのFRの方がカッコいいじゃない?

やっぱり自分の感覚が時代に取り残されてるだけか…。

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