2022年3月2日水曜日

SRX エンジン温度センサーの取付け位置変更

SRXのインジェクションの燃料補正に使うエンジン温度センサー。
水冷車なら水温見ればいいので割と簡単だけど,空冷では意外と難しい。
一般的に空冷で良く付ける油温計はドレンボルトに付けることが多い。
うちのSRXも最初のFI化の際に温度補正用の油温センサーをドレンボルトに取り付けた。ドレンボルト部分は油温が取りやすいが,この部分の油温はエンジンの中でも比較的温度の低いミッション側を潤滑した油も混ざっているため,エンジン内の油温としては低目,しかも温度上昇がかなり遅い。
この「温度上昇が遅い」っていうのが燃料の補正用としてはかなり曲者で,今まで冬は冷機時の燃料増量補正が切れる設定温度の50℃に上がるまで20分近くかかり,冬の燃費が悪いという状態だった。
FIの低温補正はキャブのチョークみたいなもんなので,本来冬だって5分も走ればなくても問題無い。
とは言え元々キャブからしたらかなり薄いセッティングなのもあり,多少燃費が悪い以外には特に不具合が無かったので放置していた。
最初のインジェクション化から8年がたち,いい加減セッティングも煮詰まってきているおかげであまりやることも無いため,今年はここの改善に着手。

世間で売っている空冷+FIの車両のエンジン温度センサー取り付けとしては,シリンダーヘッド近傍でエンジンオイルに浸かる部分から油温を取っていることが多い。
シリンダーヘッドとの熱伝導を考えると液体に浸けた方が良いので,できればSRXもそうしたい。
が,もともとヘッドにセンサーなんぞ付ける前提の無いSRXでは,そんなスペースが無い。
なのでFIの補正として温度が取りたい部分=吸気ポート近傍の温度が測れる部分として,シリンダーヘッドにインマニと共締めにするステーを増設,そこに温度センサーを取り付けることにした。

最初に設計してみたモデルはこんな感じ。
この時はまだ切削で作るつもりだったのでシンプルな形状。
このモデルを試しにDMM.makeに出して,アルミ素材で3Dプリントした際の見積もりを出してみたところ,どう考えても切削より安い金額が出てきた。
なので今回は金属3Dプリントの部品製作のお試しも兼ねて方向転換。

3Dプリントだと切削加工と比べて「複雑形状でも高くならない」「製品の体積が小さいほど安くなる」という特徴がある。
切削だと複雑形状にして軽量化は加工時間が増える分で大幅に金額が上がるが,3Dプリントだと複雑でも体積が少なく軽いものの方が使用する材料が少ない分安くなる。
体積が小さい方がヒートマスが減るため,エンジン本体温度への追従性が良くなるという意味でも,今回の用途にはピッタリと思う。

それを念頭にモデルの改修をした。
ある程度強度を考えながら,抜ける所はとにかく抜く。
何度か改修を繰り返し,最終版はこんな感じ。
やり始めたら興が乗って来てやり過ぎた感…。
ちょっと切削だといくらかかるか怖すぎる形状だけれど,3Dプリントだとこの形状が最初のモデルに比べて25%ほど値段が安くなった。

これをDMM.makeで発注,納期が最大1カ月程度とのことだったが,1週間ちょっとで到着。
製品はこんな感じ。
材質的には鋳造材に近いとのことだが,表面のザラザラ具合も相まって鋳造品にしか見えない。
ボルト座面等はザラザラのままだとちょっと心配なので,締め付けに関連する部分はオイルストーンで研磨,センサー取り付けのネジ部にタップ加工を行って仕上げる。

センサー部分は熱伝達の向上を期待してシリコンオイルを注入し,漏れないようにガスケットを使って締め付け。

車両に付けるとこんな感じ。
取り付けると鋳造のインマニと本当に見た目の差が無い。
ついでに奥まってるおかげでのぞき込まない限り外からも殆ど見えない。

肝心の冷間補正時間の短縮はこんな感じ。
赤線が今回のセンサー取り付け,青線がオイルタンク取り付け。
スタートの温度は赤が6℃,青が13℃。
走行時の外気温度は赤が9℃,青が16℃で,暖機性としては赤の条件がだいぶ不利。
その状態でも,赤線は暖機完了の50℃まで7分,青は14分。
この時期は概ね70℃前後で落ち着くが,70℃になるまでの時間は赤:17分,青:28分。

最大温度の精度はちょっと落ちるかとも思ったが,意外と落ち着く温度はほぼ一緒。
ヒートマスが小さい分,走行/停止での温度変化は今回の方が大きい傾向。
とは言え前半で書いたように,FIで温度を測る目的は「エンジンの特に吸気ポート近傍温度に対する燃調補正」なので,油温だと実際のポート温度変化に対してレスポンスが鈍い=補正が大ざっぱになる,という意味では,温度変化のレスポンスが良いのも今回の狙い通り。

センサー内に入れたシリコンオイルも,100℃程度までは上げても漏れてくるようなことにはなっていないので,ひとまずこの仕様で1年程度様子見予定。


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